耐震診断士の仕事②
前回の続きです。
旧耐震基準以前の建物の弱点である3つの項目
①基礎が無筋コンクリート基礎である
②構造材の接合部に金物が使われていない
③耐力壁が少ない
について細かく見ていきましょう。
①基礎が無筋コンクリート基礎である
住宅の基礎に鉄筋が入れられるようになったのは、1980年代に入ってからです。
旧耐震基準の基礎は、外周は無筋コンクリートの布基礎で、内部の基礎は一部を除いて独立基礎という場合がほとんどです。
無筋コンクリートは、曲げに対する応力に弱く脆性破壊を起こしやすいため、地震などによってヒビが入ることが多いです。
ヒビの入った無筋コンクリート基礎。
このヒビが入った基礎に、さらに応力が加わると、基礎の破壊が起こり建物が傾いたり、最悪の場合は倒壊につながります。
②構造材の接合部に金物が使われていない
地震が起きた際、柱や梁などの構造材はそれ自体が折れたりすることは少なく、柱から梁が抜け落ちるなど、接合部が破損することによって倒壊につながることが多いです。
旧耐震基準の家の接合部。羽子板ボルト・鎹(かすがい)程度の金物しか使われていない
そのため、現行の耐震基準では接合部には金物による補強が必要です。
当社施工の新築住宅(耐震等級2)の接合部
③耐力壁が少ない
現在の木造軸組み工法は、柱と梁・桁の軸組が鉛直荷重を負担し、筋交いや構造用面材などの耐力要素がある壁は耐力壁として水平力を負担するため、耐力壁形式とも呼ばれています。
この耐力壁がとっても重要で、床面積に応じた量以上の耐力壁が、バランスよく配置されている必要があります。
昔の家の間取りを見ると、窓や襖が多く、開け放てば広々とするのですが、その分耐力壁となる壁量が少ないです。
おそらく日本で一番有名な家、サ○エさんの家の間取り。窓や襖などの開口部が多く、耐力壁が少ない。設定では昭和21年築らしい。
また、古い家になると筋かいも入っていない家も多く、代わりに土壁を耐力要素として見ることになりますが、筋かいに比べれば耐力要素としては弱いです。
筋かいが入っていない土壁の耐力壁。
以上のような点が地震に弱い理由としてあげられますが、言い換えればこの部分を補強することによって、古いお家でも現行基準並みに耐震強度を上げることができます。
このように、耐震診断士は耐震強度の低いお家の弱点を見出し、どうすれば地震に強くなるかをアドバイスする、言うなればお家のお医者さんのような仕事です。
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